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風 山 堂

(foussin's diary)

ジャン・クリストフより引用

 いかなる民族にも、いかなる芸術にも、皆それぞれ虚構がある。世界は、些少の真実と多くの虚偽とで身を養っている。人間の精神は虚弱であって、純粋無垢な真実とは調和しがたい。その宗教、道徳、政治、詩人、芸術家、などは皆、真実を虚偽の衣に包んで提出しなければならない。それらの虚偽は各民族の精神に調和している。各民族によって異なっている。これがために、各民衆相互の理解がきわめて困難になり、相互の軽蔑がきわめて容易となる。真実は各民衆を通じて同一である。しかし各民衆はおのれの虚偽をもっていて、それをおのれの理想と名づけている。その各人が生より死に至るまで、それを呼吸する。それが彼にとっては生活の一条件となる。ただ数人の天才のみが、おのれの思想の自由な天地において、男々しい孤立の危機を幾度も経過した後に、それから解脱することを得る。

ジャン・クリストフ ロマン・ローラン作 第四巻 反抗/一 流沙
岩波文庫豊島与志雄 訳/第三巻 24頁 2行目より)

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 今年の成人の日は 1/11。明後日だ。それに因んでそれっぽいネタにしてみる。上記の一節は、自分が若い頃に読んで気に入って、厚紙にコピーして本の栞にしていた(写真右の紙はコピー元の台紙…先日大掃除をしていたら出てきた)。

 上記の一節は他人を攻撃するための文章ではなく、自分自身を律するための文章になっている。自分もこの文章によって何度も戒められた(おそらくは著者自身をも束縛した言葉だろう)。自分を律する言葉との出会いによって人は思慮深さを身に着ける。