風 山 堂

(foussin's diary)

月冴える晩、を予測する…

地球の車窓から(16)

カテゴリ:夜の虹・月・二十四節気

長文です。。。

 やっとここまで辿り着いた。昨年11月~12月にかけて、アイソン彗星への期待から毎日のように夜空を眺めていた。そのうちに、黄道が 24時間サイクルで動いていることに、ふと気が付いた。そして、冬のふたご座流星群が観測し易い理由とか、夜空に関する色々なことが連鎖的に納得できるようになった。

 さっそく本題。結論から言うと、月が高く昇り、明るい月夜が楽しめるのは、秋分以降~春分直前ぐらいの期間に限られる。で、自分が今まで『月冴える晩』にこだわってきたのは、その日が『日本で月の虹を見る(撮る)ための必須条件』の日であることに気が付いたからだ。
 

夜の虹(ナイトレインボー):

 ネットで検索すると色々出てくるが、ハワイの『ナイトレインボー』が有名らしい。ハワイでは、文字どおりの『七色の虹』が夜でも見られるそうだが、日本国内でそれを見るのは無理っぽい。だが、白っぽい月の虹なら、日本でもたまに拝むことができる。夜の虹が出る条件をネットで調べると…

1. 月の光が強く明るい
2. 薄明どきは見えない
3. 上空に虹の材料(水滴)が存在する

 この条件が揃った時、らしい。日本国内では今の時期だと、黄道の高度が高くなるのは 19時頃(前回の記事で言うところの夏至時刻)。…これは薄明時刻とカブるので、正直なところ条件はイマイチ良くないが、悲観するのはまだ早い。↓

f:id:foussin:20140310014819j:plain

 上の図の『薄黄色のグラデーション』の範囲の月齢であれば、高度は充分に高く、明るい月夜が楽しめます。その根拠は、ここ数か月の自分の観測経験です(あとで実例を示します)。ただし、上弦前後の月(月齢6~8)は、南中時刻が日没時とモロカブリなので、明るすぎてさすがに無理。

 

ハワイがナイトレインボーの名所の理由:

 ハワイが『ナイトレインボー』の名所と言われるのは、ハワイ諸島の位置が北緯 19度から 29度の範囲にあることが大きいと思う。ちょうど北回帰線(北緯23.4度)を挟むように島々が点在していて、年間を通して太陽も月も天頂付近を通る。

 高く登る太陽の日差しが強いのと同様に、高く登る月も冴え冴えと輝く。要するに、赤道付近では夏と冬の太陽の高度差が小さい。言い換えると、昼の黄道と夜の黄道の高度差が小さい。だから高く登った太陽の日没後に、月もまた高く登る。そのため、ハワイは『ナイトレインボー』の名所と言われる訳だ。で、それが満月で、上空に虹の材料(水滴)が存在すれば、夜でも七色の虹が出る確率は非常に高くなる。
 

月の虹を見た日のデータを確認してみた:

2013年12月16日の月(月齢13.6):

 昨年の12月16日23時頃、自分は運よく東京で月の虹を見ることが出来た。もちろん写真も撮った。↓

f:id:foussin:20140310014909j:plain

date: 2013.12.16 Mon 23:17
PENTAX K-50 f/10、7.35秒露出(バルブ)、ISO-800、18mm(換算27mm)

関連記事:夜の虹(2013.12.17)
http://foussin.hatenablog.jp/entry/2013/12/17/001027

日付(日本時間)      太陽黄経  二十四節気
----------------------------------------
2013.12.16 04:34:12  264.00   -
2013.12.22 02:11:00  270.00   冬至

 雲が流れているので、バルブ撮影だと分かると思う。月の虹は淡いので、長時間露光が望ましいワケで。当日の太陽黄経は 264度。で、昨年の月出・月没・月齢のデータ収集はしてないので、国立天文台のサイトで調べてみた。↓

f:id:foussin:20140310014957j:plain

国立天文台『今日のほしぞら』より: http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/

 月齢は13.6。ちなみに、この日の月南中時刻は 22:59 だった。まあ 23時といえる。撮影した時が、ほぼ月の南中時刻だったワケ。で、早見盤で当日の夏至時刻を調べてみると 00:30 頃になった。↓

f:id:foussin:20140310015018j:plain

 月齢 13.6 の南中時刻と夏至時刻とは、約1時間半も離れているが、当日の月は首が痛くなるほどの高さだった。なので、図の薄黄色の範囲にある月ならば、充分な高度と明るさがあると思われる。

 

2014年2月15日の満月:

f:id:foussin:20140310015037j:plain

date: 2014.02.15 Sat 21:52
PENTAX X-5(コンデジ) 57mm(換算317mm)、f/5.9、1/30秒露出、ISO-100

関連記事:満月(21:51頃)(2014.02.15)
http://foussin.hatenablog.jp/entry/2014/02/15/222655

 この日(先月)の満月は、肉眼では微かに虹が見えていたが、写真に焼き込むには色が淡すぎた。コンデジ撮影の欠点は、絞りの微調整がままならないところ。手持ち撮影だったのも失敗だった。せめて、思い切って ISO-800 にしていれば、もうちょっと良くなったかもしれない。雲が写るぐらい露出オーバーにしないとね……

日付(日本時間)          太陽黄経
----------------------------------------------
2014.02.15 04:04:04     326.00
月.日  日出   日没   月出  月南中  月没   備考
----------------------------------------------
02.15  06:28  17:23  17:45  24:12  06:41  望

 この日の月齢は 15(2月は日付と月齢が同じだった)。南中時刻は 24:12 か… 自作プログラム、00:12 と出力するように直さないと駄目だな(気が付かなかった)。。。それよりも、今は早見盤だ。えーと、太陽黄経 326度か。↓

f:id:foussin:20140310015116j:plain

 ご覧のとおり、夏至時刻からずいぶん離れた位置に満月がある。たしかに、この日の満月は高度が低かったし明るさもイマイチだった。南中の 2時間前ということもあるが、南中時でもさほど高くはなっていなかった。肉眼で虹が見えたのは、上空に水滴が存在していたのと、一応満月だったので、まあまあの明るさだったから、というのが妥当だろう。

 12月に見た月は、厚い雲から月が透けて見えるほどの明るさだった。そのぐらいじゃないと、ハッキリとした月の虹は見えない…ということだと思う。
 

国内で月の虹が見れるとしたら、それは今週です:

 さて。今シーズン最後の高度が高い『夜の月』は、3/10(月)~3/12(水) ぐらいになる(月齢 9~11ぐらい)。見ごろの時間帯は 19時から20時半の間になると思う。

 今の時期では満月より、上弦よりちょっと太った月の方が高度が高く、冴え冴えと輝く。日本国内での月の明るさは、満ち欠けによる面積の大きさも重要だが、南中高度の違いによる照射量の大きさの方がもっと重要だ。で、これを逃すと秋分以降まで明るい月夜の晩はない。

今週:日南中時刻11:50、日南中高度51度、薄明始04:31、薄明終19:11

月.日  日出   日没   月出  月南中  月没   備考
-------------------------------------------------------------------
03.09  06:01  17:43  11:14  18:23  01:34  -
03.10  05:59  17:44  12:04  19:10  02:17  -
03.11  05:58  17:45  12:56  19:56  02:57  -
03.12  05:56  17:46  13:49  20:41  03:34  -
03.13  05:55  17:47  14:43  21:26  04:09  -
03.14  05:54  17:48  15:38  22:10  04:42  -
03.15  05:52  17:48  16:33  22:53  05:14  -
03.16  05:51  17:49  17:30  23:37  05:46  月が天の赤道を通過(20:16)
来週:日南中時刻11:48、日南中高度54度、薄明始04:20、薄明終19:18
03.17  05:49  17:50  18:27  24:22  06:19  望(02:08)
03.18  05:48  17:51  19:26  25:10  06:54  -
03.19  05:47  17:52  20:25  25:58  07:32  -
03.20  05:45  17:53  21:26  26:49  08:14  -
03.21  05:44  17:54  22:27  27:44  09:01  春分(01:57 太陽黄経 0度)
03.22  05:42  17:54  23:27  28:40  09:54  -
03.23  05:41  17:55  --:--  --:--  --:--  -

※ 今月の月齢は、だいたい『日付 - 1』です。

…月南中時刻が 28:40 とかになってる… 28時って何時だ(?) (^^;

 
 これで、お月さん関連トピックは終わりです(たぶん)。あとは空を見て、虹が出ていたら写真を撮る。それだけ。…しかし… 冬の満月は太陽とは逆に高度が高くなる…ということを説明するだけで、こんなに長文になってしまうようじゃ、社会的常識として定着しないのも仕方がない話なのかもしれない。

 でもやっぱり、月は人にとって非常に身近な天体。しかも今は 21世紀。このぐらいのことは一般常識として認知されて然るべき、とも思ってしまうんだな。。。
 

P.S.:秋になったらまた、日本で月の虹が見える日の予測をする記事を書こうと思っている。その時は、もっと余裕を持たせて、より具体的な予測を立てることができると思う。