フィクション
やあ、ようこそ僕のブログへ。 僕には、どうしても知りたいことがあったんだ。 だけど、ググっても全然見つからなくて。 それで仕方なく、自分の足で調べ、やっと探し出したよ。それは… (略) …とまあ、こういう事なんです。 しかし。 Web で検索しても 1件もヒットしなかった。 この件について興味を持っているのは 世界中で僕 1人だけってことになるなあ。 ということは、この記事… 誰にも読まれないまま、情報の海に埋もれてしまうかもしれない。 でも、それでもいいと思っているんだ。 何十年後かに、この情報を求めて誰かが読んでくれるかもしれない。 その、未来のたった一人の読者のために この記事を放置しておこうと決めたんだ。 人間は、いつかは死ぬ。それは僕も例外ではない。 僕がいなくなっても、この記事はずっと残して欲しいと願っています。
彼の記事はここで終わり、それ以降、ブログが更新されることはなかった。
…そして、50年もの月日が流れた。
ブログの管理会社も、そのブログサービスも、奇跡的に健在だった。そして、彼のブログも放置され続けた。執筆者は既に故人となっていたが、記事を読んだ遺族が故人の意思を尊重したため、削除されずに済んだのだった。
現在(2062年)、彼のブログには 5人の読者がいる。10年に 1人ずつ読者が増えた計算になる。だが、実際の読者はいつも 1人だけだった。読者の方も、4人は既に故人となっていた…
彼のブログの処遇が、今後どうなるかは誰にも分からない。
現在、ローカルドライブやクラウドのストレージには、膨大なテキスト、画像、動画などが蓄積され続けている。それらは単なるデータではない。言霊…と呼んでもあながち大袈裟とは言えない…そんな重いものも含まれている。
そんなデータを預かる Web サービス会社の責任は、決して軽くはないぞ… と、最後はちょっと怖いオチで締めてみる(自分は詩人にはなれないな…)。